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卵子凍結の基礎知識|費用・年齢・助成制度と決める前に知っておきたいこと
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卵子凍結の基礎知識|費用・年齢・助成制度と決める前に知っておきたいこと

卵子凍結を考え始めた人へ。採卵から凍結、将来の融解までの流れ、医学的適応と社会的適応の違い、年齢と出産率の関係、費用の内訳、自治体の助成制度、知っておきたい限界をまとめました。

約8分で読めます
#卵子凍結 #妊よう性温存 #費用
📑 目次

「卵子凍結したから、当面は安心なんだよね」。数ヶ月前、友人がそう話していたのを聞いて、正直ちょっと引っかかった。「安心」の中身を、自分もあまり深く考えずに使っていたなと思ったからだ。

卵子凍結は、たしかに将来の選択肢を増やす方法のひとつではある。でも「凍結さえしておけば将来いつでも妊娠できる」という理解のまま話が進んでいるとしたら、それはちょっと違う。今回は、卵子凍結の仕組みと、年齢・費用・助成制度まわりの現実的な話を整理してみたい。

卵子凍結って、具体的に何をするの?

卵巣刺激から採卵・卵子凍結保存までと、将来使用する際の融解・受精・培養・胚移植の流れ

卵子凍結(正式には「未受精卵子凍結」)は、名前の通り、受精させる前の卵子を体の外に取り出して凍結保存しておく方法。

流れはおおまかにこんな感じ。

卵巣刺激:注射などで卵巣を刺激し、複数の卵子を育てる。期間は10日前後が目安。

採卵:育った卵子を、経膣超音波で確認しながら細い針で採取する。麻酔をかけて行うので当日の痛みは比較的少ないが、採卵後しばらくは安静が必要。

凍結保存:採取した卵子を、ガラス化保存という方法で急速に凍結する。この状態のまま長期間保存できる。

(将来)融解・受精・移植:使うと決めたときに卵子を融解し、精子と受精させて(顕微授精になることが多い)、数日培養したのち子宮に移植する。この工程自体は、体外受精の治療の流れとほぼ同じ。

ここでいったん確認しておきたいのは、卵子凍結の時点ではまだ「妊娠」も「出産」もしていないということ。あくまで「将来使えるかもしれない卵子を、今の状態のまま置いておく」処置にすぎない。

「医学的適応」と「社会的適応」で、意味がけっこう違う

同じ卵子凍結でも、目的によって位置づけが変わってくる。

ひとつは「医学的適応」。抗がん剤治療や放射線治療などで、将来卵巣の働きが低下する可能性がある人が、治療を始める前に卵子(や胚、卵巣組織)を凍結しておくケース。これは「妊よう性温存」と呼ばれ、がん治療と並行して検討されることが多い。

もうひとつが「社会的適応」(ノンメディカル卵子凍結)。病気とは関係なく、健康な人が、将来の妊よう性低下に備えて任意で行うもの。ここ数年、この社会的適応での卵子凍結が話題になる機会が増えた。

処置自体は同じ「卵子を凍結する」でも、対象となる人の状況も、この後で触れる助成制度の有無も違ってくる。

年齢と卵子の数、そして「出産に至る確率」の話

ここがいちばん誤解されやすいところだと思う。

日本産科婦人科学会は2023年、ノンメディカルな卵子凍結を検討している人に向けて、正確な医学的情報を伝える目的で解説動画とポスターを公開した(「ノンメディカルな卵子凍結をお考えの方へ」)。学会がわざわざこうした呼びかけをしているのは、裏を返せば「卵子凍結さえしておけば将来の妊娠が約束される」という誤解が広がりやすいテーマだから、とも言える。

つまり、卵子を凍結したからといって、それがそのまま将来の妊娠・出産になるわけではない。凍結卵子1個あたりが将来の出産につながる確率は年齢や卵子の質によって変わり、年齢が上がるほど、また凍結できる卵子の数が少ないほど、その確率は下がっていく傾向がある。逆に言えば、複数個の卵子を凍結できていれば、確率としては積み上がっていく、ということでもある。

年齢の目安についても触れておくと、日本生殖医学会が2018年に示した指針では、社会的適応(ノンメディカル)での卵子凍結について、採卵時の年齢は40歳未満、凍結した卵子を使う年齢は45歳未満が推奨されている。医学的適応(がん治療前など)の場合はこの年齢の目安がそのまま当てはまるわけではない。あくまで社会的適応での目安であって、これを過ぎたら絶対にダメというラインではないけれど、参考にはなる数字だと思う。

正直なところ、「何歳までに決めないと」と急かされるような受け取り方はしてほしくない。年齢は数ある要素のひとつであって、それだけで判断が決まるわけではないから。

費用はいくらかかる?内訳を分解してみる

卵子凍結は、医学的適応・社会的適応を問わず、保険が使えない自費診療。ここが、条件付きで保険適用になった体外受精とはっきり違うところ。

内訳はだいたいこんな感じ(クリニックによって差が大きいので、あくまで目安として見てほしい)。

採卵までの費用:検査代、排卵誘発剤の薬代、採卵手術、凍結の技術料をあわせて、1回あたりおおよそ30万円台〜60万円程度。採卵数が多い(=薬の量や通院回数が増える)ほど高くなる傾向がある。

年間保管料:卵子を凍結保存している間、年間で数千円〜数万円程度かかることが多い。複数年分をまとめた料金プランを用意しているクリニックもある。

将来、使うときの費用:融解、顕微授精、培養、胚移植までで、体外受精1周期分に近い、30万円前後がさらにかかると考えておいたほうがいい。

複数回採卵する場合は、当然その分費用も積み上がる。トータルで見ると、決して小さな金額ではない。

自治体の助成制度、がん治療前の公的支援

費用の話をすると「じゃあ助成は使えないの?」と聞かれることが多いので、ここも整理しておきたい。

医学的適応(がん治療前の妊よう性温存)については、厚生労働省が実施している「小児・AYA世代のがん患者等の妊孕性温存療法研究促進事業」を通じて、都道府県が費用の一部を助成する仕組みがある。実施主体は都道府県や指定都市で、対象条件や助成額は地域ごとに違うので、治療を受ける医療機関や、お住まいの自治体のがん対策窓口に確認するのが確実。

社会的適応(ノンメディカル)の卵子凍結についても、独自に助成をしている自治体がある。たとえば東京都は、卵子凍結を行った年度に一定額、その後は保管状況の報告と引き換えに毎年一定額を助成する制度を設けている(2026年時点)。ただしこれはあくまで一例で、実施している自治体自体がまだ限られているし、対象年齢や金額、申請条件も自治体ごとにかなり違う。「自分の住んでいる自治体でも使えるはず」と思い込まず、お住まいの自治体の子育て・少子化対策の窓口や公式サイトで、最新の案内を確認してほしい。

決める前に、知っておきたい限界

ここまで流れと費用、助成の話をしてきたけど、いちばん伝えたいのはここかもしれない。

  • 凍結すれば将来必ず妊娠できる、という保証ではない。融解後にすべての卵子が受精・妊娠に至るわけではない
  • 卵子は若いときの状態のまま保存できても、将来使うときの母体側の年齢や体の状態はそのまま。高齢での妊娠・出産のリスクがなくなるわけではない
  • 将来実際に使うときには、体外受精と同じくらいの費用と身体的な負担が、もう一度かかる
  • 凍結した卵子を結局使わない可能性もある。その場合、保管費用だけがかかり続けたり、どこかで廃棄を判断するタイミングが来る

個人的には、卵子凍結を「将来への保険」と言い切ってしまう紹介のされ方には、正直ちょっと引っかかりを感じる。保険というより、「今すぐ決めなくていい」という時間の猶予を買うイメージに近いんじゃないかと思う。それでも、将来の選択肢を残せること自体には意味があるはずで、そこは否定したくない。

卵子凍結について調べれば調べるほど、「絶対にこうすべき」という単純な答えはないんだなと感じる。仕組みも、費用も、助成の有無も、置かれている状況によって全然違ってくる。

迷っているなら、まずは信頼できる医療機関で、自分の年齢や体の状態にあわせた話を聞いてみるところから始めてみてほしい。焦って決める必要はない。


参考文献

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よくある質問

Q. 卵子凍結をすれば将来必ず妊娠できますか?
いいえ、保証にはなりません。凍結した卵子を将来使っても、年齢や卵子の質によって出産に至る確率は変わります。
Q. 卵子凍結は健康保険が使えますか?
使えません。医学的適応・社会的適応のどちらであっても、卵子凍結そのものは自費診療です。助成制度で費用の一部が補助される場合はあります。
Q. がん治療前に卵子を凍結する場合も助成はありますか?
厚生労働省の事業を通じて都道府県が費用の一部を助成する仕組みがあります。対象条件は治療施設や自治体の窓口で確認してください。
白滝由紀

この記事を書いた人

白滝由紀

フェムケア研究所 編集長

🏅 日本フェムテック協会認定フェムテックアンバサダー

フェムケア領域の情報発信に携わるライター(29歳女性)。女性の健康課題について、信頼できるエビデンスに基づいた情報をわかりやすく届けることを目指しています!

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