PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)とは?生理不順・妊活への影響と治療
生理周期がバラバラ、基礎体温を測っても排卵日が分からない。PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)の診断の考え方、症状、妊活への影響、治療の選択肢をわかりやすく解説します。
📑 目次
生理が2ヶ月、3ヶ月と来ない。かと思えば、思い出したようにダラダラ続く。基礎体温をつけてみても、きれいな二相性にならなくて排卵日がまったく読めない。
そんな状態が続いて婦人科を受診したら、「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の可能性があります」と言われた。そんな経験をした人、周りにも意外といるんじゃないでしょうか。
PCOSってどんな状態?
PCOS(Polycystic Ovary Syndrome)は、卵巣の中で卵胞がうまく育ちきらず、排卵が起こりにくくなる状態のこと。「嚢胞」という字が入っているので怖い響きですが、悪性の病気ではありません。生殖年齢の女性にとって、月経異常や不妊の原因としてよく見られるものです。
日本産科婦人科学会生殖・内分泌委員会は2024年に診断基準を改定していて、次の3項目をすべて満たす場合にPCOSと診断するとしています。
- 月経周期異常(無月経・希発月経・無排卵周期症のいずれか)
- 多嚢胞卵巣所見(超音波検査で片方の卵巣に直径2〜9mmの小さな卵胞が10個以上見える)またはAMH高値
- アンドロゲン過剰症(男性ホルモンが高い、または多毛などの症状がある)またはLH高値
3つとも数字や検査結果に基づく基準で、「なんとなく生理不順だから」だけでは診断されません。逆に言えば、生理不順があるだけの人と、PCOSの人はちゃんと区別されるということです。
なぜ排卵がうまくいかなくなるの?
PCOSの人の卵巣では、LH(黄体形成ホルモン)がFSH(卵胞刺激ホルモン)に対して相対的に高くなりやすく、このバランスの崩れが排卵の妨げになっていると考えられています。あわせてアンドロゲン(男性ホルモン)がやや高めに出ることも多く、これが卵胞の成熟を邪魔してしまう。
インスリン抵抗性との関係もよく指摘されます。日本産科婦人科学会の資料に引用されている国内データでは、PCOSの人のインスリン抵抗性の頻度は約32.8%とされていて、欧米の報告(5割以上)より低めではあるものの、無視できない割合です。インスリンが効きにくくなると、体はより多くのインスリンを出して血糖値を保とうとし、それが卵巣でのアンドロゲン産生を後押ししてしまう、というのが大まかな仕組み。
ここで誤解しやすいのが「PCOS=太っている人の病気」というイメージ。日本産科婦人科学会の全国調査では、PCOSと診断された人のうちBMI18.5〜25未満の標準体格だった人が6割超(コントロール群では7割超)で、標準体格の人のほうが多数派でした。もちろんBMI25以上の割合はコントロール群より高く、体重と無関係とは言えないのですが、「太っていないからPCOSではない」とも「太っているからPCOSのせい」とも言い切れないということです。
どんな症状として出てくる?
生理周期の乱れが、いちばん気づきやすいサインです。日本産科婦人科学会の調査では、PCOSの人の月経異常の内訳は希発月経(周期が長い)が約6割、無排卵周期症が2割強、無月経が2割弱で、内訳は人によって違います。
そのほか、以下のような症状が出ることがあります。
- にきび(尋常性痤瘡)
- 多毛(体毛が濃くなる)
- 急な体重増加、または体重が落ちにくい
ただし、同じ調査では多毛が見られた人は13.5%、にきびは10.4%と、症状が出る人は一部にとどまります。「生理不順はあるけど多毛もにきびもない」という人もふつうにいるので、症状が全部揃っていないからPCOSではない、と自己判断するのは早いです。
妊活を考えている場合
排卵が起こりにくいということは、自然妊娠のタイミングがつかみにくいということでもあります。とはいえ、PCOSだから妊娠できない、というわけではありません。
婦人科では、排卵誘発薬を使って卵胞の発育を促す治療がよく行われます。生活改善だけで自然に排卵が戻る人もいれば、薬の力を借りたほうがスムーズな人もいて、このあたりは本当に個人差が大きい。インスリン抵抗性が強いタイプでは、インスリンの効きを良くする薬を併用することもありますが、効果の出方には個人差があり、必ずしも全員に同じように効くわけではないとされています。
妊活を始めるタイミングでPCOSが分かった場合、「まず自己流で半年様子を見る」より、早めに婦人科で相談したほうが選択肢を持てることが多いと思います。排卵の状態を確認しながら治療方針を組み立てていけるので。
対策・治療の選択肢
すぐ妊娠を希望していない場合は、低用量ピルで生理周期を整えたり、アンドロゲン過剰による症状をやわらげたりする治療がよく選ばれます。生理が何ヶ月も来ない状態を放置すると、子宮内膜が厚くなったまま剥がれ落ちる機会がなく、別のリスクにつながることもあるので、「生理が来ないだけだから」と放っておくのはあまりおすすめしません。
体重管理も選択肢のひとつとして挙げられることはあります。インスリン抵抗性がある人では、体重が数%減るだけでもホルモンバランスが変わり、排卵が戻ることがあると言われているからです。ただしこれは、標準体重の人にまで「痩せれば治る」と当てはめられる話ではありません。BMIが正常範囲のPCOSの人のほうが多いというデータを踏まえると、体重だけに原因を求めるのは違う気がします。生活習慣の見直しは、あくまで選択肢のひとつとして、自分の状態に合わせて考えるものだと思います。
受診の目安
こんな状態が続いていたら、婦人科での相談を考えてみてください。
- 生理が3ヶ月以上来ない
- 生理周期が毎回バラバラで、予測がまったくつかない
- 多毛やにきびが急に目立つようになった
- 妊活を考えているのに、なかなかタイミングがつかめない
「そのうち整うかも」と数年様子を見てしまう人も少なくないのですが、検査を受けてみないと、自分がPCOSなのか、単なる一時的な生理不順なのかは分かりません。
最後に
PCOSは珍しい病気ではなく、診断基準もここ数年でより明確になってきています。生理不順があるからといって、それだけで不安になりすぎる必要はありません。
一方で、「体質だから」「そのうち治る」と自己判断だけで済ませてしまうと、妊活のタイミングを逃したり、症状を長引かせたりすることもあります。気になるサインがあれば、一度検査を受けて、自分の状態を数字で確認しておくと安心材料になるはずです。
参考文献
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よくある質問
- Q. PCOSは治りますか?
- 完治を目指すというより、症状や妊娠希望に合わせてホルモンバランスをコントロールしていく病気です。年齢や体重の変化で状態が変わることもあります。
- Q. PCOSは太っている人しかなりませんか?
- いいえ。日本産科婦人科学会の全国調査では、PCOSの人の6割以上がBMI18.5〜25未満の標準体格でした。肥満の有無だけで判断できる病気ではありません。
- Q. PCOSでも妊娠できますか?
- 多くの場合、排卵誘発などの治療で妊娠を目指せます。ただし個人差が大きいので、妊活を考え始めた時点で早めに婦人科に相談するのがおすすめです。
この記事を書いた人
白滝由紀フェムケア研究所 編集長
🏅 日本フェムテック協会認定フェムテックアンバサダー
フェムケア領域の情報発信に携わるライター(29歳女性)。女性の健康課題について、信頼できるエビデンスに基づいた情報をわかりやすく届けることを目指しています!

